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Moscardini in guazzetto al Vermentino 小ダコのヴェルメンティーノ蒸し煮

最終更新: 3月13日



現在展開中のイタリア北西部リグーリア地方の料理から。

南仏から続く世界屈指の風光明媚なリヴィエラ海岸に沿って位置するこの地方、豊かなティレニア海の海の幸を存分に活かした料理が白眉である事は言わずもがな。


〝Moscardino モスカルディーノ“ と呼ばれる小ダコは料理名が示す通り、高品質な白ワインの産地らしく地酒ヴェルメンティーノをサッと振りかけて、後は小ダコ自身の水分をベースに短時間の蒸し煮にしたなんともシンプルで素朴な一皿。

火を通しても硬くならない小ダコの特性、独特の地形と気候風土がもたらすミネラル分豊富な白ワインとの組み合わせが作り上げる味わいはまさにリグーリアの沿岸部そのもの。


この小ダコ 〝Moscardino モスカルディーノ“ は普通のタコとは種類も違い、リグーリア海域での特産と言われ、その小ぶりなサイズ、触手に吸盤が1列に並んでのびているのが特徴的な品種。


小ダコは地域などでいろいろ違いはあるが、イタリアでは基本的にはその中でも大きく3種類に分けて考えらているようだ。

文字通り白いっぽい「Bianco ビアンコ」、同じく野苺のような赤みを帯びた、とされる「Fragolino フラゴリーノ」、そしてこの〝Moscardino モスカルディーノ“ の語源とされる「Muschiato ムスキアート」だ。


「Muschiato ムスキアート」とはいわゆる〝麝香 〜じゃこう(ムスク)の香りのする〜“ を意味する。いわばワインの〝Moscato モスカート“ と共通した語源となるこのタイプは特に他の種類に比べて独特の「香り高さ」が特徴とされる。


一般的なタコの呼び名である〝Polpo ポルポ (あるいはPolipo ポリポ)″ との識別で〝Polpo Muschiato ポルポ ムスキアート 〜じゃこうダコ〜″ となり、そこから転じて〝Moscardino モスカルディーノ“ と呼ばれた経緯だ。


現地でこうした煮込み系の他、マリネやサラダ、サッと茹でたり炒めたり、あるいは揚げたり、と頻繁に登場する味覚の1つだが、いずれにせよ素材本来の持ち味を活かしてシンプルに仕上げる料理が多い。


余談だが、イタリアのタコにも色々と種類がある中、いわゆる普通のタコは総じて標準イタリア語では〝Polpo ポルポ ″ (時折ラテン語語源の多足類として意味で Piovra ピオーヴラ が使われる事や、地方ごとの方言もある)であり、このタイプの小ダコをそのサイズから単純に 〝Piccolo ピッコロ″ をつけて呼ぶようなことにはならず、〝 Polpetti ポルぺッティ ″となる 。

→ 男性複数形であり、ペンネなどと同様、単体での調理は現実的には有り得ない為、普通に複数形が用いられると推測する。


それに付け加え「肉、果肉」は女性形で 〝Polpa ポルパ ″ と呼ばれ、そこから派生する言葉〝Polpetta(e)ポルペッタ (テ)″ はその細かい肉片、挽肉などをつなぎ合わせた料理、

いわゆる「ミートボール」を表すこととなり、日本で間違われやすい料理名表記の一例で語尾の男性女性系の違いで全く意味が変わってしまう事に注意したい。


だが、同じ挽肉料理でに大型のミートローフ的なものは〝Polpettone ポルペットーネ ″と呼ばれ、こちらは男女同型の「e」が語尾であるが、実は男性形。

こうなると言葉の前に着く冠詞での判断となってしまうので、イタリアという外国の食文化を表現する事の面白さと難しさ、責任を感じるひとコマである。


今回は日本で入手可能な「飯タコ」を用いて表現してみたもの。

春の到来を告げる一皿だ。


12. Marzo. 2020


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