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  • Noriyuki Koike

Lombardia 〜Vol.4〜





【〜源流〜 Costoletta コストレッタ】

ここからはコトレッタという定義から一歩踏み込んで、一つの料理としてその手法からの分析に着目してみる。そうして見えてくるのが、「源流」の形、そう言うと少々大袈裟だが、大筋の流れを捉える上で実は最も重要な観点だ。

今更だがここまでは散々「コトレッタ」という呼び名を敢えて使ってきたのだが

ここからようやく登場させる事となるが、実はこの料理においてミラノの伝統的な手法として最も相応しく、また由緒正しい(?)のは「Costoletta コストレッタ」なる呼び名と手法である、と断言しよう(少々ややこしくなり恐縮だが)。


〝Costoletta コストレッタ” とは言わば〝骨付きロース” であるが、詳しくはその骨とは〝肋骨” の事を指す言葉だ。 この肋骨をイタリアの食肉用語で〝Costola コストラ” と呼び、それは人間も牛も脊椎動物は共通して大切な心臓や肺、内臓を護る外殻として存在している。そしてさらにその肋骨を護る為の防御壁や衝撃吸収材の役目として、肋骨に付いて周りを囲む背中側の筋肉を有する。すなわちそれが〝ロース” の部分であり、コストラに(の)ついた肉を指して〝Costoletta コストレッタ″ となる。

一般的に四つ脚の食肉でのロースという部位としての筋肉はもちろん身体に内部の保護の為にだけ存在するのではなく、身体を動かすための大事な機能も兼ねているのが、部位的には腕や腿、スネ、首周りなど、良く動かす箇所と違ってその頻度は少ない。繊維も硬くなり辛く柔らかで、筋が多方向から入り組んだりもしない。

そのロースを肋骨付きのまま調理に用いる形であるそれが肉としてのコストレッタだ。


そもそも仔牛(豚や仔羊も含む)の肉の一部位を指す言葉であったが、ミラノでは仔牛のコストレッタを用いてパン粉を纏わせバターで揚げ焼いていた。それがいつしか料理そのものを指す言葉ともなっていった足跡だ。


ちなみに成牛のこの部位は〝Costata コスタータ” となるり、コストレッタとなると広義で〝Costine コスティーネ →スペアリブの部分“ に捉えられる事となりやすいので混同しないよう注意が必要となる。

今も昔も成牛、仔牛、この部位はいずれにせよ高価なものだ。仔牛のコストレッタはまだ若く肉質も繊細であり、一頭から僅かしか取れない希少性も相まってやはりごく一部の富裕層が食せる部位であった事、またその為の料理であった事が見えてくる。


【Cotoletta o Costoletta】

ここまでを一旦まとめてみると、言うなればコストレッタも現在の判断基準で言えば当然コトレッタという料理の枠組みや概念の一つである事は間違い無いのだが、ただたった一本の肋骨の有無でコストレッタとしての成り立ちや地域性に注視した上で切り離すと、コートレットが語源とされる通常のコトレッタと呼ばれるものは仔牛の骨付きでは無い部位を用いたものや、あるいは豚や羊、鶏、七面鳥など他の肉類を用いた時などにも広く当てはまる言葉として分ける必要があると言える。


わかりやすく言えば仔牛のロースを用いても骨付きでなければそれはコストレッタではなくコトレッタであり、逆に骨つきロースのコストレッタを用いてもコトレッタと名乗る事に障壁は無い。

また、仔牛以外の他の肉であれば〇〇のコトレッタ、という様になるり、仮に豚や仔羊の骨付きロースでコトレッタを作ってもその料理名は単純にコストレッタとはならないと注意してもらいたい。

イタリア料理の世界において、大枠としてコトレッタという料理を〝薄く叩いた肉にパン粉纏わせて揚げ焼きにした料理(油脂は土地によりけり)” と定義付けるとすれば、仔牛のコストレッタという部位をこの手法で調理した料理そのものを直結してコトレッタという料理に結びつけて考えられ、そのまま料理名として名乗れるのはあくまでこのミラノという街の特権であり、別の表現をするならば限定的な名称、という事となる。

ここまで述べてきた諸々、これがコストレッタをコトレッタの源流として考える必要がある背景だと捉えている。


誠もってややこしいがそう言った確固たる線引きが確実に存在している事を認識しなければならないだろう。

また、この話の発端フランス語でも同様にこの仔牛や豚、仔羊の骨付きロースそのものも、パン粉をつけた料理も共に〝Côtelette コートレット” と呼ばれるのがまた混乱材料でもあり悩ましい。


イタリアとフランス。 政治的な影響ももちろんだが、逆輸入とは言え当時としてみればフランスというヨーロッパ列強諸国と最強の座を争っていた一国の文化だ。文化意識の高いミラノの人々は時代の最先端として大いに受け入れた事なのであろう。

ロンバルディアディア 、続く。


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