Osteria dello Scudo
~Sapori Antichi~
として進むべき道
店名に掲げた "Scudo" とは「盾」。
副題として添えた "Sapori Antichi" は
「昔ながらの味」を意味します。
冒頭の頁でも触れたように、イタリアの長く複雑な歴史や
気候風土などを背景にその地方、地域、街、村、家族ごとに
育まれ、根付き、伝統として受け継がれてきた
多種多様で表情豊かな郷土の食文化。
それはまさに他の何にも代え難い宝物であると
私は信じて疑いません。
このオステリアでは、目まぐるしく進みゆく時間や、
時代の流れの中において、失われつつあるこの大切な宝物を
如何にして護り、磨き、未来へ伝えていくことを理念に、
文字通りその《盾》になるべく
日々、伝統料理と向き合っています。
クラシックカーやアンティーク家具を、
愛情を込めて大切に手入れをし、
時にはパーツを取り換え、磨き込むことで
新たな息吹、価値観を注ぎ込む職人達、
あるいは色褪せた古い絵画を
色鮮やかに描かれた当時のものへと蘇らせる修復士達。
彼らのように伝統の食文化への想いを自らの仕事に重ね、
「決して変えてはいけないもの」と
「変わらないために変える事が必要なもの」
料理が語りかけてくる先人達の想いに耳を傾けながら
時代を超えた価値観や世界感を表現し、
伝統を次の時代、未来に繋いでいきたい、
と切に願っています。
「盾」は現状を護るだけの
一方的な受け身のものではなく
゛盾の両面を見よ ” の言葉があるように
その料理が持つ歴史や古い一面を大切にしつつ、
伝統料理の表裏、真理、を深く探求することが
必要であると捉えています。
それはすなわちある意味、
時代と逆行していくかのようにも映りますが、
だからこその相対的な価値や輝きが
増していくものと信じずにはいられません。
【イタリア料理の未来】という答えのない道。
過去から続くその道に不変の輝きを与える事も、
未来へ向かうのその道を創っていくのも他の誰でもない、
今を生きている我々なのです。
そんなちっぽけなですがゆるぎない想いを胸に
一歩ずつ、イタリアを巡る時間の旅を
し続けていくかのように。
たった一枚の盾を携えて
料理人
小池 教之